コラム記事「本法人設立にあたっての理念」(1/2)
本コラムでは、本法人の研究事業の一環として、研究メンバーがそれぞれ、一研究者として、自由なテーマを設定して記事を公表していきたいと思います。そこで、記念すべき第1号として、本法人設立にあたっての理念について論じたいと思います。
本法人は、2016年に小さな研究会からスタートしました。私を含めスタートメンバーは、経営学を専攻する研究者たちでした。設立当時、日本の経営学研究の環境は良好とは言いがたい状況にありました。経営学研究を志す者は、「学会では1度でも失敗したら道は絶たれると思いなさい」と教え込まれます。
この教え自体は、私の考え方の軸となり、1つのことを必死にやろうとするマインドは形成されたので、良い教えだと思っています。
ところが、いざ学会では、大学院生やポスドクの研究発表が先輩研究者による攻撃の的になる場面も幾度となく目にしてきました。
私自信も、EUのコーポレート・ガバナンスについて博士論文をまとめていたときに、母校にいたとある研究者から研究報告の際に「EUにはイギリスしか入ってないじゃないか!そんな連合の研究をしてどんな意味がある!」と言われたことがあります。その時、EUにイギリスは含まれていましたし、別にEU離脱の現実味も全く帯びていないころでしたので、単純にその先生の勘違いです。
しかし、師匠に「先生に嫌われたら終わり」と教え込まれていたことから反論できなかったのです。そんな勘違いの意見で、研究意義を否定されたら学生はたまったものではありません。教員となったいま、学生が真剣に取り組んでいる研究の意義を真っ向から否定するのではなく、良い報告へと導くような発言をするべきだと考えています。
私は、大学院生時代のはじめのころは、「そういう厳しい業界なんだ」と特にその状況を疑うことはしませんでした。ただ、失敗したと思っても「意外に終わりではないな」とは感じていました。初めてその厳しい状況に疑問を抱いたのは、国際学会に参加した時でした。
国際学会では、世界各国の研究者が集まり、多様な発表が展開されます。多様な考え方やアプローチで発表されるわけですから、必ずしも納得できる発表ばかりではないはずですが、日本の学会のような攻撃が見られることはありませんでした。
むしろ、コーヒーブレイクやパーティーの際には、学生も教員もかなり対等な関係で交流をしていました。そのときから、「日本の学会は体質が古いのかも知れない」と考えるようになりました。