コラム記事「暗号通貨の暴落とWeb3業界におけるガバナンス問題」(1/3)
近年、Web3に対する関心が高まっている。Web3とは、これまでの中央集権型ネットワークから、自律分散型ネットワークへと移行した新しいネットワークのあり方やビジネスモデルをいう。これまで、オンラインの市場は、GoogleやAMAZON、FACEBOOK(META)など大手企業による支配が強かった。こうした中央集権的なネットワークを中心とする市場では、個人情報の管理や競合他社との関係性など多くの問題が指摘されてきた。そうしたなかで特定企業の集権的な管理に頼らないWeb3は、新しい社会のあり方として注目を集めたのである。
この自律分散型ネットワークを実現するのが、ブロックチェーンと呼ばれる技術である。ブロックチェーンは、ネットワーク上の参加者間の取引記録が参加者に分散されて保持されものであり、特定の管理者による制御を必要としない。ブロックチェーンの代表的なものが、暗号通貨で最も有名なビットコインである。ビットコインは、少しずつ認知度を上げ、資産としての価値を見出されたことで2018 年ごろに200 万円まで高騰するバブルを産んだ。その後も、徐々に価格を上げ、2020 年から投資が集中して700 万円を超える金額で取引されるに至った。2020 年以降、ビットコインは、大幅な値動きをしながら、暗号資産投資の注目を集める原動力となった。2020 年以降の暗号資産市場は、多くの専門家やインフルエンサーによりビットコインの価値が上昇し続けるとの見解が示されてきたことからも典型的なバブル景気であるといえるだろう。しかし、アフリカ諸国による法定通貨への指定やアメリカや中国によるデジタル通貨発行の決定、UAEによる暗号通貨の促進など、暗号通貨に期待するに十分な材料が揃っているため、すでに終わったものという印象も今の所ない。
また、ビットコイン以外にも続々と新規の暗号通貨が発行され、新ビジネスの資金調達の手段としても活用されている。本来、株式会社は、株式を発行して各国法の規制を受けながら、運営され、厳しい上場規則をクリアすることで、やっと市場から資金調達することができる。だからこそ、上場企業に対する社会からの信用は高いのである。しかし、暗号通貨を使用することにより、こうした丁寧な段階を踏まずに、手軽に世界中から資金調達をすることができるようになった。これは、創業ブームを生みつつも、なかには詐欺やポンジスキームとして用いられるものもあるなどの問題点を孕みながらも、投資家の出資を集めている。
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