コラム記事「暗号通貨の暴落とWeb3業界におけるガバナンス問題」(2/3)

2021/5/15 明山健師(嘉悦大学)

そして、2022年4月から5月にかけて、ビットコインの暴落を引き金に多くの暗号通貨を巻き込んだ暗号通貨市場の大暴落をするに至った。長い歴史を見れば、価値の上がり続けるものは存在せず、バブルはいずれ弾けるものである。専門家やインフルエンサーの煽りによって判断を誤る投資家はいたであろうが、暗号通貨市場でも、いわゆるバブル的な価値の高騰と暴落を繰り返すことは、個人投資家の言動を見ても想定されていた。それにもかかわらず、暗号通貨市場の大暴落は、コインポストの報道によると、Bybitという取引所において24時間で計上されたデリバティブ取引のロスカット額が1000億円を超える規模であった。

なかでもLUNAとUSTという2つの銘柄の大暴落は、歴史まれに見る暴落であった。2022年4月5日の段階で119.5ドルを記録したLUNAは、ビットコインの下落に同調して5月5日に78.235ドルを記録した。この時点では、他の暗号通貨とくらべて大した下落をしていなかったが、5月9日から大幅に下落し、最終的には0.00001515ドル(取引所によって異なる。ここではBinanceの価格を基準とする)にまで下落し、多くの取引所でデリバティブ取引が停止され、一部の取引所では、現物取引も一時的に上場廃止が決定された。過去にオランダで発生したチューリップバブルは、大邸宅2軒分もの価値まで高騰したチューリップが元の100円程度の価値に戻るのにたったの一晩しか要さなかったと言われているが、まさに、今回のLUNAの大暴落はそれを彷彿とさせた。

この下落の背景には、Web3業界、特に暗号通貨市場の問題点が見え隠れしている。まず、このLUNAとUSTの2つは、Terraform Labsによって発行された暗号通貨である。USTはステーブルコインと呼ばれ、USドルペッグの通貨として利用されていた。USTをドルにペッグするために担保は使用されず、LUNAという自社の通貨をミント(生成)、もしくはバーン(焼却、つまり通貨を市場から排除)することによってUSドルの価値を保持するというアルゴリズムが使用された。つまり、USTがUSドルに対して高い場合は、USTの需要に対して供給が不足していることを示すため、USTを発行するために、LUNAをバーンすることでUSTを生成する。そして、USTがUSドルよりも安くなっている場合は、USTの供給が過剰であるため、USTをバーンしてLUNAを生成する。このように、相互にバーンすることによって、価値が保存される仕組みになっていた。


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