コラム記事「Web3に見る株式会社に代わる新たな企業の可能性」(1/2)

2022/6/29 明山健師 (嘉悦大学)

株式会社は、1600年代初頭に誕生してから、それほど大きく形を変えることもなく、今日まで経済活動の中心的な役割を担ってきた。株式会社は、有限責任制度と株式の自由な譲渡という特徴がある。この2つの特徴により、会社を設立すれば資金調達がしやすいことから、大規模な経営に向いている会社形態であるされてきた。

とはいえ、大規模な経営を目指す場合に、簡単に資金が調達できるかといえば、それなりにハードルは高い。市場から資金調達しようとする場合、証券取引所に株式会社を上場させる必要がある。証券取引所に株式会社を上場させる場合、証券取引所の上場規則および審査をクリアする必要がある。そのため、これからビジネスを始めようとする起業家が市場から資金調達する機会としてはハードルが高いのである。

そのようななか、株式会社一強時代を破壊する可能性を秘めた組織が誕生した。それは、暗号資産を用いた組織である。なかでも、DAO(Decentralized Autonomous Organization、自律分散型組織)は近年注目を集めている。暗号資産の活用が活発となり、その活用法も多様化されている。暗号資産のなかには、ガバナンストークンと呼ばれる株式に類するものが発行されている。このガバナンストークンのホルダーは、組織の意思決定に参加することができ、ステーキング(預入れ)などを通じて利益の配分を受けることもできる。まさにガバナンストークンが担うのは、株式会社における株の役割である。このガバナンストークンは、事業開始初期に発行され、事業をスタートする際の資金調達に用いられている。

事業開始初期から資金調達をできることから分かるように、こうした暗号資産を用いた組織体の形成は、株式会社の資金調達に比べて圧倒的にハードルが低い。まず、暗号資産の発行にあたって、法的な規制は緩く、国際ルールもほとんど存在していない。法的な規制が緩い背景にあるのは、web3の概念自体が特定の1つの国にとどまるものではなく、Webを介して世界中に分散するものだからである。国内の株式市場のように法的規制のもとで取引が行われている訳でもない。また、株式会社のように国内法によって根拠法の存在するものでもないことから、創業者の手によって比較的自由にトークンが発行される。トークンを発行した時点で安く大量のトークンをweb上にばら撒いている状態となる。そして、世界中に点在する取引所や販売所に上場することでそのトークンがweb上で売買される。トークンが上場する際に、暗号資産の販売所や取引所がそれぞれの裁量によって、トークンを上場させるのかを判断することになる。